NAISTイベントレポート
成果発表会
Posted by:naist
|Update:2010.04.01
休憩のあと、4番目に話したのは大学院生の奥山史さんです。奥山さんは細胞構造学講座(塩坂教授)の、次に話す駒井准教授のグループで脳の研究に取り組んでいます。
生物の研究は、極論すると2つに分けられます。ひとつは生物を役に立てたいという研究で、農作物の研究、家畜の研究や微生物を使って役に立つもの(例えばお酒とかパンとか)をつくろうというものです。
もうひとつは、私たち自身、つまりニンゲンのことを知りたいということです。
ニンゲンとは何なのか、いろいろな捉え方がありますが、“脳”をニンゲンの本質ととらえる考えも成り立ちます。“我思う、故に我あり”、だれの言葉かしらべておきましょう。
人間の脳は、想像の通りとてもよくできています。例えば目から入ってくる視覚情報は、“光”を網膜で感知して、その情報を脳が解析して、その結果を私たちが“見えた”と感じているのです。脳は、網膜が感知する光情報“以上のこと”を生み出してしまう、スグレものなのです。例えば、1枚の写真は平面的な情報しかもっていないのに、私たちは“奥行き”を感じることができます。
つまり、脳は網膜からの情報に、プラスαを補って、見えたこと以上のことを感じているのです。それを利用した現象が“錯視”です。錯覚のひとつで、資格に関するものなので、錯視、といいます。例えば、図はカニッツァの三角形という有名な錯視図形です。イタリアの心理学者ガエタノ・カニッツァが、1955年に発表しました。
したが広い正三角形は見えると思いますが、同時に上が広い、白い正三角形が見えると思います。しかし、実際には上が広い正三角形は存在していません。これは脳が情報を補って私たちに正三角形を見せているのです。
脳が情報を補うことは大部分は役に立っていますが、時には私たちが、だまされる、原因にもなってしまうのです。
奥山さんはこの“錯視”に注目し、脳が情報を補うしくみを明らかにしようとしています。脳が光情報を認識するというところではなくて、そこに情報を補うという、まさに、高次の機能を解明するために“錯視”という現象を切り口にしているのです。
具体的には、マウスに錯視図形を見せて、行動実験によって錯視がおこったかどうか判断し、錯視がおこったときに脳の中で何がおこっているかを、さまざまな方法で解析します。
最終的に、ニンゲン、のことが知りたいのですが、そこでビミョウな問題が出てきます。ニンゲンのことが知りたいならニンゲンで研究したらいいのに、という考えは成り立ちます。ニンゲンなら錯視が見えたかどうかをその人に聞けば答えてくれますので簡単です。しかし、人間の脳の中をのぞいたり電極をさしたりするのはムリです。
反対にマウスなら脳はしらべられますが、錯視が見えたかどうかを聞くわけにはいかないのです。そこで行動実験をして、見えたかどうかを判断します。簡単にいうと、例えば三角形が見えたらエサをとりにいくように訓練しておいて、錯視図形を見せてエサをとりにいったら、三角形が見えた、と判断するというようなことです。
ニンゲンの研究って、めんどくさいですね。でも究極的に楽しいです。
一覧に戻る
新着イベントレポート
NAISTでは、年間を通じて様々なイベントを開催しております。
詳しくは、イベント一覧をご覧ください。
» NAISTイベント情報