研究人材の遺伝子/奈良先端科学技術大学院大学⁄インキュビー大学院紹介

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NAISTバイオサイエンス研究科で行われる様々なイベントを紹介していきます。

学位記授与式

Posted by:naist |Update:04/06

すこしまえですが、平成21年度の学位記授与式が3月24日におこなわれました。

ミレニアムホールで磯が学長が式辞を述べられましたが、その一部を是非ご紹介したいです。

磯貝学長は、自身が学生時代(大学3年と4年の時)2人の学長の卒業式での式辞を紹介されました。2つは全く異なる視点であるものの、当時、1960年代に急激な発展を遂げつつある日本経済を手放しで喜ぶのではなく、そこに生じはじめている小さな“ひずみ”を心配し、それを解消することを呼びかけている点では、同じことを言っていたのではないかと指摘しています。

つまり、卒業生がこれから、社会と自分自身との関係をキチンと捉えて、自分自身のため、また社会のために生きていって欲しいという、先輩からの忠告であったのでしょう、と述べられました。

また、当時と現在とでは科学技術の点で大きな違いがあります。この50年ほどで科学技術は大きく発展しましたが、その代わりに、さまざまな問題を同時に生み出しています。おそらく、50年前の式辞は、いま、そのまま通用すると思われます。

つまり、卒業生がこれから、科学技術社会と自分自身との関係をキチンと捉えて、自分自身のため、また科学技術社会のために生きていって欲しいという、忠告なのです。

成果発表会

Posted by:naist |Update:04/03

最後の講演者は本研究科、細胞構造学講座(塩坂教授)の駒井章治准教授です。

駒井先生は本研究科の3期生でもあります。バイオサイエンス研究科が育てた人材であり、また人材を育成する立場でもあります。

優秀な人材を育成し、それが受け継がれていく、このようなよい循環(ポジティブフィードバックループ)がしっかりと形成されることを目指しており、その一番手が駒井先生です。

また駒井先生は、とてもかわった経歴を持っています。上智大学の文学部を卒業されていますので、文系出身ということになります。私たちの奈良先端大学は、多様な学生を受け入れることを目指し、アドミッションポリシーにも明記しています。まさにそのような私たちの理想にかなったケースです。

さらに、駒井先生がやっている研究は、“融合研究”のすばらしい例です。脳科学はいろいろな手法を融合させて、総合力で挑んでいく必要のある分野であり、またそれができる素地も整ってきました。

この3つの点で、駒井准教授はバイオサイエンス研究科そのもの、といっても過言ではありません。


さて、脳研究は分子生物学、遺伝学、細胞生物学といった、いわゆるバイオロジーのほか、コンピュータサイエンス、ナノサイエンス、光サイエンス(顕微鏡技術)、など、その他にもあらゆるテクノロジーを巻き込んでアプローチがされている分野です。

なぜか??本当にいろいろな要因があってここでは書ききれないのですが、ひとつは“電気”です。神経細胞は電気を使って信号を受け渡ししていますが、電気(電流と電圧)は定量できます。また人工的につくることができます(つまり外から与えることができます)。これがもっとも大きな要因です。

バイオロジーでいちばん問題になるのが定量性です。分子がそこにあるかどうかはしらべられますが、何個ある、というところまではなかなか定量できないです。その点、電気は容易に定量できます。また、外から分子を細胞に入れるのは難しい、特に、決まった数を入れるのはめちゃくちゃ難しいです、その点でも、電気を一定量だけ入れることは(電極を細胞にさすのですが)簡単です。

つまり、脳科学がバイオロジーを牽引しているともいえるのです。

駒井先生の講演は、あらゆるテクノロジーを集結した“融合研究”のお手本を示してくれました。

新入生オリエンテーション

Posted by:naist |Update:04/02

4月2日、今日は新入生オリエンテーションです。残念ながら写真はないですが、新M1は元気がよさそうです。午後からは楽しい試験が2つ、TOEICとオープニングテストです。午後のおそい時間まで続きます。新入生の第1日は入学式前なのにヘトヘトになるハードな1日、でも忘れがたい1日になりそうです。

成果発表会

Posted by:naist |Update:04/01

休憩のあと、4番目に話したのは大学院生の奥山史さんです。奥山さんは細胞構造学講座(塩坂教授)の、次に話す駒井准教授のグループで脳の研究に取り組んでいます。

生物の研究は、極論すると2つに分けられます。ひとつは生物を役に立てたいという研究で、農作物の研究、家畜の研究や微生物を使って役に立つもの(例えばお酒とかパンとか)をつくろうというものです。

もうひとつは、私たち自身、つまりニンゲンのことを知りたいということです。

ニンゲンとは何なのか、いろいろな捉え方がありますが、“脳”をニンゲンの本質ととらえる考えも成り立ちます。“我思う、故に我あり”、だれの言葉かしらべておきましょう。

人間の脳は、想像の通りとてもよくできています。例えば目から入ってくる視覚情報は、“光”を網膜で感知して、その情報を脳が解析して、その結果を私たちが“見えた”と感じているのです。脳は、網膜が感知する光情報“以上のこと”を生み出してしまう、スグレものなのです。例えば、1枚の写真は平面的な情報しかもっていないのに、私たちは“奥行き”を感じることができます。

つまり、脳は網膜からの情報に、プラスαを補って、見えたこと以上のことを感じているのです。それを利用した現象が“錯視”です。錯覚のひとつで、資格に関するものなので、錯視、といいます。例えば、図はカニッツァの三角形という有名な錯視図形です。イタリアの心理学者ガエタノ・カニッツァが、1955年に発表しました。

したが広い正三角形は見えると思いますが、同時に上が広い、白い正三角形が見えると思います。しかし、実際には上が広い正三角形は存在していません。これは脳が情報を補って私たちに正三角形を見せているのです。

脳が情報を補うことは大部分は役に立っていますが、時には私たちが、だまされる、原因にもなってしまうのです。

奥山さんはこの“錯視”に注目し、脳が情報を補うしくみを明らかにしようとしています。脳が光情報を認識するというところではなくて、そこに情報を補うという、まさに、高次の機能を解明するために“錯視”という現象を切り口にしているのです。

具体的には、マウスに錯視図形を見せて、行動実験によって錯視がおこったかどうか判断し、錯視がおこったときに脳の中で何がおこっているかを、さまざまな方法で解析します。

最終的に、ニンゲン、のことが知りたいのですが、そこでビミョウな問題が出てきます。ニンゲンのことが知りたいならニンゲンで研究したらいいのに、という考えは成り立ちます。ニンゲンなら錯視が見えたかどうかをその人に聞けば答えてくれますので簡単です。しかし、人間の脳の中をのぞいたり電極をさしたりするのはムリです。

反対にマウスなら脳はしらべられますが、錯視が見えたかどうかを聞くわけにはいかないのです。そこで行動実験をして、見えたかどうかを判断します。簡単にいうと、例えば三角形が見えたらエサをとりにいくように訓練しておいて、錯視図形を見せてエサをとりにいったら、三角形が見えた、と判断するというようなことです。

ニンゲンの研究って、めんどくさいですね。でも究極的に楽しいです。

成果発表会

Posted by:naist |Update:03/31

3月20日の成果発表会の3人目の講演は、遺伝子発現制御学講座助教の松井貴輝先生です。

講演のタイトルは“生物の形づくり〜細胞集合のメカニズムと生理的意義〜”。

私たちのからだで、例えば肝臓、腎臓、心臓など各臓器は細胞が集まって、機能的な集合体をつくっています。これらはもともと前駆細胞からできてきます。

では前駆細胞から肝細胞に分化して、それから集まって肝臓になるのか、または前駆細胞が集まってそれから肝細胞に分化するのか、という疑問がうまれます。

多くの場合は後者、つまり前駆細胞が集まって集合体をつくり、それが一斉に分化するという方式をとっているようです。人間や動物の社会ともよく似ています。例えば、人間の場合、子どもが小学校に登校する時、“集団登校”ということをすることがあります。一人一人の子どもが迷わないように、どこかに行ってしまわないように、みんなで一斉に動きます。

また、前に話題に出した“クオラムセンシング”にも関係します。バラバラの時期に分化すると不都合な場合が多いのですが、何か一斉に分化するしくみがあると考えられています。そのためにも集まっている方が都合が良いようです。お互いに分化誘導し合ってポジティブフィードバックがかかって一斉に分化するしくみになっています。

松井先生の講演から、細胞社会と人間社会で共通の動作原理が働いている、と感じられました。

成果発表会@メルパルク京都

Posted by:naist |Update:03/26

2番目の発表者は増田美和さんです。

増田さんは2年前に修士をとって卒業しました。

NAISTに来る前は某有名製薬会社で働いていて、成長したいと考えてNAISTに入学した強者です。研究室(別所研)ではFRETという現象を使ってゼブラフィッシュ胚内で、ある分子の活性をリアルタイムで追うという、超難しい技術の開発に取り組んでいました。2年間の短い間でそれをやり遂げ、タダモノではないことを示して理研のリサーチアソシエートとして2年間がんばってきました。

理研ではゼブラフィッシュの嗅覚の研究で、においに反応していることを行動学的にアッセイするしくみを立ち上げ、期待通りの働きをして、高い評価を得ています。

成体のゼブラフィッシュの皮膚の細胞は“アラームホルモン”という未知の物質を含んでいることが、最近わかってきました。例えば敵に仲間が襲われて、皮膚に傷がつくと、水の中にアラームホルモンが放出され、仲間の魚に危険を知らせるという社会性がわかってきたのです。

ゼブラフィッシュはアラームホルモンを嗅覚で感知します。そして最初に激しく運動し(Burst swiming)次いで動かなくなります(freezing)。この運動をモニタすれば魚がにおいを感じた瞬間を特定することができるのです。

動物の感覚器の実験はなかなか難しいです。人間ならにおいがしたかどうか、意思表示してもらったらすむ話ですが、魚に知らせてもらうのは一苦労です。あとで話す奥山さんの錯視も同じです。三角形が見えましたか?とネズミに問いかけても、噛まれることはあっても答えてはくれません。

ところで、嗅覚のしくみは1990年頃から急激に明らかになってきました。におい物質のレセプターが分子として同定されたのがきっかけで、それ以降、ぐっと進歩しました。やはり、モノとして同定されることが分子生物学の第一歩なのです。もちろん、それですべてがわかるわけではありませんが、必要条件なのです。

1990年から数年間ですばらしい進歩を遂げ、2004年のリチャード・アクセル、リンダ・バックのノーベル賞受賞につながりました。1細胞ー1受容体ルール、1糸球−1受容体ルールなどですが、ここでは説明しませんが、みなさんしらべてみてください。

増田さんはNAIST、理研とわたりあるいて自分が“研究がすきだ”と実感できたそうです。いい話です。

成果発表会@メルパルク京都

Posted by:naist |Update:03/26

成果発表会のトップバッターは河野研のD1山本 洋平さんです。

講演のタイトルは“構造異常タンパク質を分解するしくみ〜DNAJB12の機能解析”。つまり、DNAJB12という小胞体の膜上に存在するタンパクが、異常なタンパクを見つけて分解するのに役立っているという話です。

ワトソン―クリックがDNAの構造を明らかにして以来、情報の貯蔵庫であるDNAから情報が読み出され、mRNAを介して、タンパクがどのように作られるかということが研究されてきました。そして、、、だいたいのところはわかってきました。でも、それは、もしうまくいったら、ということです。うまくいかない場合なんか考えていなかったし、だいたい出来上がったタンパクが分解するところなんて、考えてもいませんでした。

みなさんも身に覚えはありませんか?小さい子どもが、プロ野球選手や宇宙飛行士になりたいと夢を持って、うまくいかないなんてぜんぜん考えていないのとよく似ています。

実はタンパク質も、機能的なかたちになるまでに、結構な割合でうまくいかない分子がでてきます。途中でうまくいかなくなったタンパク質を正しい構造にもどしたり、それでもうまくいかない場合には、しかたないから分解するしくみがあるのです。このような“品質管理”のしくみは脚光を浴びていて、ここ20年ぐらいで飛躍的に進歩した分野です。

山本さんの所属する河野研は、この“品質管理”のしくみを研究しています。

タンパク質の“不良品”を分解するには、これまでプロテアソーム系が働いていると考えられてきました。不良品に“ユビキチン”というタグをつけて、ユビキチンのついたタンパクを目印に、プロテアソームが分解するのです。

山本さんは今回、DNAJB12という小胞体の膜上に存在するタンパクが品質管理に関わるしくみを研究し、不良品の特異的分解に、もうひとつの分解系である“オートファジー”が関わることを明らかにしました。全く予想外の、ビックリな結果でしたが、山本さんは常識にとらわれない柔軟な思考と、粘り強く実験を積み重ねて今回の結果を得ました。

常識を覆す“変な結果”がでたとき、柔軟に考え、冷静にしかも粘り強く研究を進めていくことがカギだとよくわかりました。そのためにはラボ内で指導教員だけでなく、先輩や同僚、またはラボの外でも納得いくまで議論することが大事なようです。
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