Category:incu-be*05号掲載記事|Update:2009.05.25

論理的に納得できないことに対しては、ときに相手の主張を根本からひっくり返してしまう。そんな自分自身を「かき回し屋」と称する児嶋准教授は、研究にもキャリアにも1本の筋を通してきた。34歳という若さで准教授として奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)に赴任した彼は、どこまでいっても満足することのない探究心を持っている。
「数万の遺伝子の中のたった1個の水素結合の違いが生物に起こる現象を大きく変えてしまう」。化学に惹かれて入った理学部で恩師が語ったその一言が、科学者としての道を決めた。「生物学的なアプローチではクリアにならない生き物の現象を物質の動きで裏付けできる」。科学者として、その非常に筋の通った世界に魅了された。以来、一貫してNMR(核磁気共鳴)装置を用いた生体高分子の立体構造解析手法の開発に取り組む。研究を始めた90年代初頭はちょうどタンパク質複合体の解析に注目が集まり始めた頃。新しい手法の開発を巡って、海外の研究室との激しい競争に身を置いていた。研究途中の実験結果が他の研究者によって『Nature』や『Science』などの有名雑誌に発表されるのを目の当たりにした。悔しい思いを多々させられながらも研究の楽しさにのめり込んだ学生時代を過ごした。
「科学者としての一歩を踏み出す場として、アメリカに渡り、カリフォルニア大学サンフランシスコ校に籍を置いた。そこで日本とアメリカの研究スタイルの違いを知ることとなる。意外なことに、アメリカの研究設備は日本と大差はない。その最大の違いは、「様々な実験結果をじっくり吟味して1つの事実を導き出すこと」にあるという。日本では手を動かして実験することに重きが置かれ、その結果を十分に吟味する時間がとれない。実験だけでは真理に到達することはできず、アメリカの研究スタイルこそ、科学の本質と気付いた。
「帰国後、2 0 0 1 年からNAISTに所属する。アメリカで学んだ真の研究スタイルを学生にも経験させるべく、週に1回、1対1のデイスカッションの時間を欠かさない。じっくりと自分の考えを議論する機会こそが研究者を育てると考えるからだ。NAISTに所属を決めた理由は、実は学生の勢いの良さだったという。「人と違うことをやってやろう、と素直に頑張ってくれるのがNAISTらしさ」。人は、頑張っている人の可能性に投資をする。NAISTの学生に、周りに左右されずに道を突き進んできた自分自身を重ねているのかもしれない。力強い数々の言葉の裏は、自分の思う道を進んでほしいと願う、学生に対する愛情の深さが垣間見られた。
「純粋にやっていて楽しい。それが今の研究の魅力ですね」と話すのは、博士後期課程3年・永井裕介さんだ。魅力的な研究テーマ・環境を求めて、いくつもの大学院を検討した結果、奈良先端科学技術大学院大学にたどり着いた。現在は、伊東教授のもとで細胞内のシグナル伝達の仲介分子『Gタンパク質』の調節メカニズムを研究している。
「我々の身体が、どうやって維持され、恒常性が保たれているのかを理解したい」と語るのは、奈良先端科学技術大学院の伊東広教授。学内制度の構築にも熱心に取り組む先生は、「この大学の研究・教育環境は非常に恵まれている」と語る。

アフリカの乾燥地帯、日差しが厳しい中で育つ野生種スイカ。この特殊な環境に存在する植物の研究に別々の視点から魅力を感じ、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)での研究に行きついた2人の研究者がいる。分化・形態形成学講座助教の宗景ゆりさんと博士後期課程2年の三田智子さんだ。