Category:incu-be*07号掲載記事|Update:2009.10.01
「我々の身体が、どうやって維持され、恒常性が保たれているのかを理解したい」と語るのは、奈良先端科学技術大学院の伊東広教授。学内制度の構築にも熱心に取り組む先生は、「この大学の研究・教育環境は非常に恵まれている」と語る。
大学院の頃から現在に至るまで一貫してGタンパク質の研究に携わってきた。「当時新たに立ちあがってきたテーマですが、現在販売されている医薬品の4?5割はGタンパク質や、その制御に関わっている分子・受容体をターゲットとし、未解明な部分も多く残された、現在も熱い研究対象です」と語る。生命活動を維持するための細胞同士のコミュニケーション。その仲介をする分子の1つが、Gタンパク質だ。留学時のボス(Alfred Goodman Gilman)がノーベル賞を受賞したことからもテーマの注目度がわかる。
伊東先生は研究の傍ら教育制度構築にも熱心に取り組む。同大学では有名企業を含む40社にインターンシップとして訪問できる制度が進行中だ。学生と同行して企業の方と話す中で、自身が学生に臨む「やる気」と「コミュニケーション能力」が、社会でも重要視されていることを再認識するという。「入学してきた学生を、サイエンスを通して成長させることが我々の使命です」。真実を追求する研究者の厳しい顔が、後進を温かく包みこむ教育者としての顔に変わる。
日本国内の複数の大学、また留学を経た伊東先生は、現在教鞭を振るう奈良先端科学技術大学のことを「私が所属したどんな大学よりも講座間の壁が低い」と評価する。同大学ではサイエンスの旗の下、生命現象の謎を解明するため当たり前のように複数の研究室がコラボレーションする。また、奈良という必ずしも良いとはいえない立地条件は、放っておいても優秀な学生が入学してこないという危機感を学内にもたらし、教員に不断の努力を強いている。そのため建物、設備、学生1人に対する教員の数、あるいは研究費の額に関しても、同大学は「非常に恵まれている」と語る。「学生が充実した研究活動を送れるように教員達もすり切れんばかりに尽力しています。だから学生は、この環境を精一杯使いこなしてほしい」。教員が学生たちと共に歩み、成長の過程を見守る。そんな温かい空気が同大学の研究室からあふれ出している。
「純粋にやっていて楽しい。それが今の研究の魅力ですね」と話すのは、博士後期課程3年・永井裕介さんだ。魅力的な研究テーマ・環境を求めて、いくつもの大学院を検討した結果、奈良先端科学技術大学院大学にたどり着いた。現在は、伊東教授のもとで細胞内のシグナル伝達の仲介分子『Gタンパク質』の調節メカニズムを研究している。

アフリカの乾燥地帯、日差しが厳しい中で育つ野生種スイカ。この特殊な環境に存在する植物の研究に別々の視点から魅力を感じ、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)での研究に行きついた2人の研究者がいる。分化・形態形成学講座助教の宗景ゆりさんと博士後期課程2年の三田智子さんだ。