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世界を驚かせた研究-右も左もわからない世界へ飛び込んで-

Category:incu-be*01号掲載記事|Update:2008.11.09


世界を驚かせた研究-右も左もわからない世界へ飛び込んで-

2007年、日本から世界へ、研究者を興奮させるような発表があった。その研究の中心にいたのは、玉置祥二郎さん。右も左もわからない研究分野に入って、 6年。たった6年で、世界を驚かせるような成果を出せたのは、実力はもちろんのこと、一から学べるしくみと支えてくれた人たちのおかげであった。



新たな分野への挑戦

学部時代は、植物、その中でも日本人に一番身近な「イネ」を育てる研究を行っていた。田んぼに出て、トラクターや運搬車を運転し、イネを栽培するのが主な仕事だ。どんな肥料をあげればうまく育つのか。それは、科学的な視点より感覚的な部分や経験則による部分が多かった。
「今後は、植物を経験則ではない別の方面から研究をしたい。その中でも日本人の主食、イネについて、もっと深く知りたい」。そこで、分子生物学的にイネを研究している研究室がある奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)に進学することを決めた。

独自の教育カリキュラム

研究分野が変わることで、不安はあった。今まで、野外での活動が多く、分子生物学的なことをやっていなかったために研究自体が全く想像できなかったのだ。しかし、実際に入学してみると研究に対する不安はすぐに消し飛んだ。
NAISTには、他の大学院にはない教育計画がある。入学するとまず、3ヶ月を超える集中講義が行われ、基礎知識をしっかりと固める。入学時の知識レベルに応じて、ひとりひとりのカリキュラムが組まれるため、他分野からの学生も不安なく研究に入ることができる。
研究室に配属されるのは入学から半年後。高度な機器が揃い、研究に専念する環境の中で、修士1年生からポスドクまですべての学生に教授もしくは准教授がつき、研究計画のきめ細かい指導をするのはもちろんのこと、担当の教官以外に複数の教官が研究のアドバイスを行う。世界に通用する研究者を育む教育カリキュラムだ。

信頼できる人との出会い

「ここは、研究する環境としては抜群です」と笑顔で語る。玉置さんの行っている研究は、花が咲くメカニズムを解明するというもの。それには、「フロリゲン」という物質が大きく関わっている。フロリゲンは、葉で作られ、花芽がつく場所である茎の先端まで運ばれることはわかっていたが、どのような物質であるのかは解明されていなかった。2005年、フロリゲンはmRNAであるという発表がされ、フロリゲンの研究に終止符がうたれたと感じた研究者もいた。周りからもmRNAで決まりとの声もあったが、これまでの実験結果から、玉置さんは「タンパク質がフロリゲンの正体ではないか」という仮説を持つようになっていた。指導教官の島本功教授のところに相談に行くと「君がこれまでやってきた実験のデータを信じる。もっとはっきりとしたデータが出るまでやってみなさい。写真が一番の証拠になる」と言ってもらえた。島本教授に自分のデータを信じてもらえたということが嬉しかった。
玉置さんが注目していたのは、イネの開花に関係するといわれている「Hd3a」というタンパク質。それらがどこにあるのかを、顕微鏡写真を用いて調べていた。思うような結果が出ず、諦めかけたこともあった。そのたびに、島本教授から「最後までやろう」と励まされた。その言葉があったからこそ、諦めずに研究を続けられた。

思わぬ業績

2007年春。信じ続けた自分のデータの結果が出た。「フロリゲンはタンパク質・Hd3aである」。2005年の発表を覆す結果となった。この研究結果は、2007年5月のScience誌に掲載された。日本人に一番身近な植物イネを使って、世界中の研究者に衝撃を走らせる発表をすることができたのだ。「信じられない」。それが最初の感想だった。
初めて、第一執筆者として出した論文が科学の最高峰といわれる雑誌に載り、念願の博士号も取得した。1年間卒業を遅らせて、自分の研究にこだわった甲斐があった。「あきらめなかった、そして信じてくれる人がいたからこそできた研究」と玉置さんは振り返る。基礎からしっかり学べるカリキュラム、研究に没頭できる環境、そして何よりも自分を信じてくれる人に出会ったからこそできた発見であった。今後もずっと研究に携わっていたいと願い、今日も植物を使って花が咲くしくみの研究に励んでいる。(文・尾崎有紀)


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