Category:incu-be*05号掲載記事|Update:2009.05.25

「株が好きで、金融系の企業に内定が決まっていたんです」。学部3年で早々に就職活動を一段落させ、あとは卒業するだけ。そんな優秀な学生が研究の面白さに付いてしまったのは、4年生で研究室に配属されてからだった。研究のことになると目をきらきらさせながら話すのは、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)で酵母を研究する修士課程2年の西村さんだ。
「西村さんの研究室では、アルコールやパンなどの発酵に関わる酵母の環境ストレスに対する応答を分子レベルで解明し、ストレス耐性の高い酵母を産業に役立てることを目指している。ストレスを受けた酵母のタンパク質は変性し、異常タンパク質として生育を阻害する。この異常タンパク質を修復するのが、プロリンの役割だ。西村さんは酵母の中にあり、プロリンと競合することで毒性を発揮する構造類似体の解毒酵素について解析を行っている。この構造類似体は自然界にほとんど存在しないにもかかわらず、これを解毒する酵素は多くのカビや酵母に存在する。いったいこの酵素は何をしているのか、機能を突き止めることが課題だ。「誰もやっていないと思ったから」という理由で選んだテーマだったが、修士1年の冬、この未知の酵素が幅広い生物に存在し、重要な役割を持つかもしれないという結果が出始めると西村さんの研究熱は過熱。正月もなく研究に没頭し、迷っていた博士課程への進学も決意した。
「「先生は厳しいけれど、学生が考えた新しい実験のアイディアでも、すぐに試すことができる」。そんな今の環境は、西村さんのモチベーションを向上させるのに一役買っている。さらに、研究室の人とのディスカッションにも余念がない。「1つのことについて、みな全然違う意見を言ってくるから、話をしていてすごく楽しいんです」。様々な人たちとの議論を通じて自分が一番腑に落ちる考えを選択するようにしているという。この研究室で博士課程に進む学生は2名。どちらが早く論文を出せるか、と持ちかけると「今年中に1報まとめたい」と意欲を燃やす。
「研究者として歩み始めたこの時期の環境は、後の研究スタイルに強く影響するといわれる。「将来は発酵を扱う企業に就職して誰かの役に立つ研究をしたい」と卒業後の抱負を語る彼に不安は見られない。「社会は博士号を取ることに否定的ですが、僕は人の意見を鵜呑みにしないし、惰性で博士号を取る人とも違う。何か分からないですけど自分は大丈夫、っていう自信があるんです」。後輩たちへの進学に対する助言を求めると、はにかみながらも、「もし迷っているなら、周りを気にするのではなく、自分が面白いと思ったことをやってほしい」と強く言い切った。そこには、今後一研究者として活躍するに違いないと思わせてくれる頼もしさがあった。
「純粋にやっていて楽しい。それが今の研究の魅力ですね」と話すのは、博士後期課程3年・永井裕介さんだ。魅力的な研究テーマ・環境を求めて、いくつもの大学院を検討した結果、奈良先端科学技術大学院大学にたどり着いた。現在は、伊東教授のもとで細胞内のシグナル伝達の仲介分子『Gタンパク質』の調節メカニズムを研究している。
「我々の身体が、どうやって維持され、恒常性が保たれているのかを理解したい」と語るのは、奈良先端科学技術大学院の伊東広教授。学内制度の構築にも熱心に取り組む先生は、「この大学の研究・教育環境は非常に恵まれている」と語る。

アフリカの乾燥地帯、日差しが厳しい中で育つ野生種スイカ。この特殊な環境に存在する植物の研究に別々の視点から魅力を感じ、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)での研究に行きついた2人の研究者がいる。分化・形態形成学講座助教の宗景ゆりさんと博士後期課程2年の三田智子さんだ。