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植物の環境応答の本質に迫りたい

Category:incu-be*04号掲載記事|Update:2008.12.12


植物の環境応答の本質に迫りたい

シロイヌナズナの鉢を横に倒して置く。その数十分後には、茎の根本が曲がり、何事もなかったかのように、先端を上に向けている。重力という外部因子に対して、速やかに応答するシステムが植物には備わっている。植物の環境応答の本質を明らかにしたいと考える中村さんは、植物の重力屈性を軸に本質へと迫るアプローチを始めた。



最大限の吸収ができる環境を求めて

 自然豊かな青森県で生まれ育った中村さんは、この美しい環境を保つためにはどうしたらよいのか、ということを幼いときから漠然と考えていた。幅広く地球環境について学べる大学に進学し、その中でも特に、植物の環境応答に興味を持った。そのため、大学院は植物に関する研究が盛んなところに進学しようと考え、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)を選択した。「詳細な研究テーマまで絞れていたわけではありませんでした。とにかく、一流のスタッフが集まり、日本の最先端の研究とはどういうものかを学べるところに行きたかった。そこで、吸収できることは、すべて吸収し尽くすつもりで入学しました」。入学後に1週間単位で複数の希望研究室を回り、中村さんは、形質発現植物学研究室(田坂研究室)で「植物の重力屈性のしくみ」を研究することに決めた。「学部の4年生の頃や入学当初は、研究や研究室について少し話したくらいでは何もわからなかった。どこで研究するのかを、こうして選べたことはとても良かったと思います」。

サイエンティストとして修行する

 現在、中村さんは、重力屈性において重要な遺伝子の機能性解析を行っている。植物は根、茎、葉、花とわかれているが、重力に対しては、茎の中の内皮細胞に応答システムが集約されていることがわかっている。修士1年のときに、ある遺伝子を持っていない変異体の中にその遺伝子を入れて、内皮細胞だけで働かせる実験を行ったところ、重力屈性が回復した。「初めて、自分で組み立てた実験で、知りたいことがわかった。植物の環境応答の本質に近づけたようでうれしかった」。中村さんにとって、やりたい実験を実現できる設備と研究資金が整っているのはもちろんのこと、田坂研究室では、スタッフは学生に対して、ひとりのサイエンティストとして接してくれることがとてもうれしいという。「学生だから言われた実験をすれば良い、というスタンスではモチベーションが上がりません。僕は一流の研究者になりたくて、ここに来た」。ひとりの自立したサイエンティストになるために、「実験計画を立て、実験をし、結果に対して考察する」という一連の研究の流れの中で、中村さんは、「どこを自分で考え、どこでアドバイスをもらうのか」ということに意識を向けている。「僕は、実験計画ではなく、結果の解釈と次にやることを考えるためのディスカッションに、授や他の人にアドバイスをもらいたい」。

研究哲学を養う

 博士課程終了後は、海外での研究を経験し、いつか世界に通用するような研究室を立ち上げたいと中村さんは願う。「研究者は、それぞれ哲学や理念を持っている。そして、明らかにしたいと考える本質があると思います。誰かのものではなく、自分の哲学や理念を掲げた研究室を運営することができれば、本当に自分が知りたいことに近づいていけるのではないでしょうか」。研究哲学を、その人の考え方そのものだと中村さんは捉える。研究哲学を養うためには、様々な人と話すことが重要だと考えている。「自分の意見を外に出すことで、人から反応をもらえます。痛い目にあうこともありますが、自分を出して、相手の話を聞いて、また、考える。これを繰り返して成長したい」。出る杭は打たれて、より伸びるのかもしれない。


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